古川ほのかの「あのねきいてねほんとはね、」#1

2022年5月に晴れてAV女優としてデビューしたのは良いものの、飛び抜けた個性の無い普通の女の子である私は、日々を漂うようにぼんやりと生きておりました。
SNSで自分の何を発信したら良いか分からず、インタビューで趣味や特技を聞かれてもパッとしたことが言えない。

外見に関しても、ときめくほど魅力的な曲線美がある訳でもなければ、目を引くような長身でも可愛らしい小柄でもない。
過去に華やかな経歴がある訳でもない。
どこまでも普通の自分で過ごしていく中で「このままじゃだめだ」と思うようになりました。

でもいきなり巨乳になることも、いきなり元レースクイーンになることも出来ない。
そこで私が選んだ発信方法は「文章を書くこと」でした。

自分に出来ることはこれしかない、と自分でブログを開設し等身大の自分を知ってもらう為に、 出来るだけプライベートに関することや普段思っていることをつらつらと発信していきました。

元来明るい性格ではない私ですが、敢えて取り繕うことはせずに。

根暗だけど、本当はこうありたい
日々生きていくこの瞬間、こういうことを思っている

そのようなことを書いていたら、いつの間にかたくさんの共感の声が届くようになったのです。

僕も同じことを思っていました
遠い存在の古川さんが同じことを考えていてくれて嬉しい

画面の向こうにいるユーザーと呼ばれる彼らは私と同じく”普通“の人々でした。

 

どこまでも普通、そんな私だからこそ、言葉を通じてより彼らと近い場所に居られたような気がして、嬉しかった。
その瞬間から、欠点だと思っていた私の普通であるという部分は長所になったように思います。

もっとたくさんの人に言葉を発信したい。
ブログでは書いていない作品の撮影中のエピソードとか、もっと知ってほしい。

そんな想いが高じて「古川ほのかにコラムを書かせてください!」と色んな媒体で言い続けていく内、有難いことにこのお話を頂くことが出来ました。

せっかく頂いたこの場所で、そして大好きな「書くこと」を通じて、ほんの少しでも古川ほのかという女の子に興味を持ってくれたら嬉しいです。

 

しかし、そんな普通代表人間である私がAVの撮影というスーパーウルトラハイパーミラクル非・ 普通な状況下で一体全体何を考えているのか。

冒頭にも書いたように私が専属させていただいているメーカーはアイデアポケットさん。
そのアイポケの人気シリーズ「ナチュポケ」に出演させていただきました。

シリーズのコンセプトは「アイポケ女優のありのまま」。
配信限定作品で内容は全てハメ撮り。
台本や設定は存在せず、とにかく素顔で、生々しく。

この言葉に嘘偽りなく、撮影中はラブホテルの密室に本当に男優さんと私の二人っきり。
そして二人の間に無骨なカメラがごろんとたった一つあるだけ。

では、後は宜しくと言わんばかりに後ろ手に閉まるドアの音を聞きながら私は立ち尽くしていまし た。
だって、この後どうしたらいいか分からない。台本が無いから。

さっき申し訳程度に赤坂の街をデートしてラテアートのカフェラテとか一緒に飲んで形上和やか な雰囲気になったけれどそんなの全部吹っ飛ぶくらいの緊張。動揺。そして静寂。

だって、だって赤坂なんてお洒落な街初めて来たし。
用が無いと来ないし。
ていうか人生で赤坂に用があった事なんて無いし。
ラテアートドリンクの飲み方なんて知らないし。
飲む前にぐちゃぐちゃにしちゃったし。

あれ、良くなかったよなあー…。
やっぱ様式美的にも混ぜる前に1回飲まないとああいうのは。

 

とかなんとか走馬灯のようにぐるぐると色んなことを考えていたら目の前に男優さんの顔が近づいてきた。
この間、数秒。

わ!近い!近いよ!ていうか早いよ!
そりゃあ男優さんはハメ撮りなんて5億回くらいしてるから慣れっこだろうけど!
私は初めてなのに!ずるい!(?)

いきなり0距離で耳元を舐められる。
ていうかいつの間にか唇も奪われている。吐息が近い。
腰に手を回されて身体を引き寄せられる。
その軽々とした一連の仕草に体格差を感じる。

あ、これからこの人とエッチなことするんだ。ほんとに。

AVの撮影なんて毎月してきたのに、いざ好きにしていいよと言われるとどうしたら良いか分からなくなる。
男優さんが作り出す渦に溺れまいとホテルの壁に岩牡蠣みたいになってしがみつく。

完全に指示待ち状態。バイト初日。
こんなにクリエイティビティの無い人間だったのか。自分。

それでもベッドに押し倒されて前戯が始まると簡単に自分の中の女、の部分が喜び出すから不思議だ。
さっきまで恥ずかしくて嫌だったことが、嫌じゃなくなる。
それどころか、もっとひどくしていいのに、とすら思う。

女の子のほとんどがそうであるように、私もまた所謂ドMである。

男のひとにいじめられるのが大好きで、口では嫌々言っている癖に実は全然嫌じゃない。
むしろ普段の撮影でも、もっと苦しくしても良いのに、とやはり思っている。
自分が苦しくなることで男のひとが気持ちよくなるところを見る悦びは、何ものにも代え難い。

だからだろうか、洗面所で正常位をしている時に「首を絞めてください」とお願いしてしまった。

対極に男優さんにはドSな人が多いけれど、男優さんに首を絞められながらセックスするのはこれが初めてだった。
気持ちいい。もっとぐちゃぐちゃにしてほしい。
ほら、有難いことに今日は台本も設定も無いことだし…いいでしょ?

若干酸欠になった頭でぼんやりそんなことを考えていて、その頃には赤坂の街でデートと称して日常風景の中に混じる自分達がひどく異質に思えたこととか、部屋のテレビで私の恥ずかしすぎるデビュー作が延々と流れ続けていることとか、色んなことがどうでも良くなっていた。

いや、やっぱ嘘。
デビュー作をテレビで流しながらその前で立ちバックするのは流石に恥ずかしくて死ぬかと思った。

今年の漢字は恥。

振り回されるみたいにしたセックスは正直めちゃくちゃ気持ちよくて、このまま何時間でも出来そうで。

だから終わった後、スタッフさんが入ってきた時、うわ、現実だ!と思ってびっくりした。
そうだった。これは撮影だった。
そんなこと、すっかり忘れてた。具体的には壁の前で岩牡蠣になり始めた頃くらいから。

 

この記事を書くにあたってこの時撮影した自分のナチュポケ作品を見返したけれど、「ええい、 もっとこうAVらしく◯◯を◯◯して◯◯◯とかせんかい!」と過去の自分に言いたくなる。

けれどナチュポケのコンセプトである、「とにかく素顔で、生々しく」というのが撮れたという意味では大成功と言って良いのではないかなぁ。

後にファンの方から届いた感想としては「赤坂の街にほのたんが似合ってなさすぎて良かったです」。
良かったなら良かったです。

見返す画面の中の私は、初めて来た赤坂のお洒落な街(似合っていない)と壁一枚しか隔てていない空間であんな辱めやこんな辱めを大喜びで受け入れている。

冷静になった状態でそれを眺めていると、やっぱAVってスーパーウルトラハイパーミラクル非・ 普通だ、と改めて思う。

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